いやーん、月曜なのに、お休み。お休みなのに、月曜。
そんな嬉し恥ずかし、休日朝恒例ヴァイナルカフェ。
ヨーロッパを、ひこにゃんチロル食べながら聴いてるここはサウザンドリーフ(千葉)。
しかしヨーロッパって随分ざっくりなバンド名だなあ。まあ昔は結構いたんだよ、そういう地名や国名バンドがな。
UKとか、CHICAGOとか、ASIAとか、イギリスのくせにJAPANとか、スイスのくせにCHINAとか、産業ロックのくせにBOSTONとか、アイドルのくせにTOKIOとか。
EUROPE/「Out of This World」(1988)
北欧というロックのド辺境から嘗てぽろっと出てはアメリカを制覇したメタルYAZAWA列伝として、未だに挙げ伝えられるこのEUROPE。
田舎モンらしい衒いないストレートさが時代的にマッチしたってのが実際のとこで、そんな百姓が着飾っても痛々しいだけ、案の定次のこれでダダスベり。
ものの見事な、80年代の完全なる一発屋。
…というのが言ってみれば当時の一般的な彼らの扱いなのだけど、それでも北欧メタルの門を世界に向けて開いたのは間違いなくこのバンドだった。
と、そんなわけで諸君。
彼等最大の忌み子「Out of this world」だ。
て、えー!?EUROPE扱うのに、まずこっからなのかよ、と。
そうなんだよ、EUROPE扱うのに、まずこっからなんだよ。
説明しよう、このアルバム、バンドとしては全米大ヒット作に続く、ものの見事なまでの大コケ作だった。
つまりポジション的には、俗に言う問題作、というやつにかなり近い。
もう少し説明すると、前作「The Final Countdown」がダサジャケの分際でバカ売れ&全米チャートに輝いた。
結果、一躍スターダムへと躍り出た彼等の次作ということで、言うなれば、成功作の次というのが如何に難しいか、それを見事なまでに具現化した典型例ともいえるような「迷盤」だ。
たっぷり予算つけられたぶん、レコード会社にあれこれ文句付けられながら製作された作風は、耳障りよく洗練の進んだポップさに彩られている。
つまり、彼等の作品ではダントツにソフトでコマーシャルな作風が特徴だ。
まず、プロデューサーは売れっ子、いや「売りっ子」ロン・ネヴィソン。
ギター抑えめアンド鍵盤どーん、なキラキラ☆オーヴァープロデュース、ロック性を削ぐならコイツにお任せってな、名80年代MTVポップ化仕事人。
そんな彼が手ぇ出すということは、即ち、そうなるっていうことだ。
しかも陣営は、メタルしゅきしゅきギタリストジョン・ノーラムが脱けて、キー・マルセロが後任に抜擢。
彼のサウンドは実にクリアで澄んでいて、そしてプレイの抑制も利く。
つまり巧くて、器用。
はい、お膳立ても完全だ。
これで見事立派ヴォーカルのジョーイ・テンペストもの、つまりは売れ線歌モノアルバムが出来ますね、と。
このせいで、当時はやれハードロックを忘れた裏切り者みたいな扱いで叩かれていたけれど、だがしかし。
30年近くも経った今からすれば、それもそれで随分と純朴で頭のおめでてえ昔話。
改めて今冷静に聴くと、楽曲も粒ぞろいな非常によく出来たハードポップの名盤だ。
確かにエッジを削いだサウンドのせいで、楽曲のインパクトが弱まった感は否めないし、何よりもミドルテンポやバラード中心の作りがいかんせん躍動感や抑揚を欠かせているのは事実だ。
ここら辺は、ロン・ネヴィソンの功罪、かくありなん。
しかしその一方で、彼等らしい透明感が最も伸びやかに際だった作品となったことも、また事実かと。
成る程、歌とキーボードを前面化させ、タイプの違うギタリストを置いてみると、EUROPEというのはこれほどクリスタルでブライトな壮麗さを備えていたのかと、ここにきてやっと知らされることになる。
それに今考えてみると、意味深いのがこのタイトルだ。
「この世界の外側」、である。
んじゃ「世界」ってどこなのか。
言うまでもなく「アメリカ」だ。或いは、「アメリカの音楽シーン」だ。
つまりは、「アメリカの音楽シーンの外側のぼくらEUROPE」、というのがこのアルバムのタイトルだ。
これは言うまでもなく、彼らそのもののことである。
そんな外側の彼らの歌だ、とこのタイトルは物語っていた。
そう考えると、ちょっとばかり感慨が深い。
ということで、振り返ってみると本作はそうした独特の魅力を備えた隠れ名盤であり、にも関わらず不当な位に評価が低くて結構可哀想だったなーとしか、今となっては思えない。
いやさー、そりゃ思えないんだけれど、でもあの頃はぼくも思ってたからねえ、うわあ何これすげえつまんねーって。この世界じゃアウトだろって。
全く怖いものだよ時代性って。あんなっすぱっすてしょー。
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- アーティスト名:EUROPE
- 出身:スウェーデン
- 作品名:「Out Of This World」
- リリース:1988年
- 北欧METAL
よって、そのほとんどが70~80年代の古いものばかり。
尤も音楽批評というかしこまったものよりは、大概がただの独り言程度のたわいない呟きなので、ゆるーく本気にせず(笑)読んでいただければ幸いです。