マンションの自治会とかくそ面倒臭い集まりこれ何とかなんねーのかなという、休日朝恒例ヴァイナルカフェ。
本日は、たまに聴きたくなる変態仮面メタルを。
CRIMSON GLORY/「Crimson Glory」(1986)
フロリダに咲いた徒花、CRIMSON GLORY。
古の名言、「いつまでもあると思うな様式美」、ってね。
まあ実際いつまでどころか、コイツら次で終わるんだけどさ。
え、LED ZEPPELINみたいな4TH?
再結成アルバム?何言ってっかよくわかんない。
で、この1stデビューアルバムだ。
かつてマサMETALGODイトーが97点を付けて褒めちぎっていた、遠い忘却の記憶の片鱗たちよ。
いや確かに名盤な上に、この連中もまたレアメタルな存在だったりするのが、このバンドである。
まず当時のアメリカ、しかも華やかしきLAメタル全盛の西海岸から、どんよりと重暗い欧州の湿り気を帯びたような正統派ヘヴィ・メタルの逸材が出てきた、という異色の衝撃。
クリムゾン仮面伝説は、ここから始まった。
いや確かにこれまでも全くないわけではなかったし、彼等のような「ヨーロピアンなアメリカンヘヴィメタル」も勿論あったのだけれど、でも少なくとも彼等のようなロニー期BLACK SABBATH~DIOのようなメタルを、JUDAS PRIEST直系の硬派なハイトーンで歌う、という「アメリカン様式美ヘヴィメタル」というのが、まずそう多くはいなかった。
で、この「様式美」ってやつだ。
そう、このクラシカルだとか、イングヴェイや速弾きシュラプネル系統とは微妙に違う意味を帯びた「様式美」というのが一つポイントになっている。
いわゆる、「様式美とはなんぞや問題」だ。
いや、いわゆらないのだけど、んじゃ「様式美」ってなんだ、ネオクラシカルと何が違うんだ、同意じゃないのかって話になるのだけど、そこら辺のニュアンスがだな、どうもうまいこと今となっては表現、伝達、理解するのが難しい。
とりあえずぼくが思うに、「様式美」というのは、英国志向、伝統志向、それらにおける美意識のありよう、じゃないだろうか。
勿論、「様式美」という概念がDEEP PURPLE~RAINBOWの流れから生じてきているものだけに、クラシック音楽との関係性が全くないというわけではない。
でも、必ずしもクラシック音楽性を備えていることが様式美を満たす必要条件でもないし、故にクラシック音楽的でないヘヴィメタルだって十分に「様式美」たりえる。
(ロニー期やマーティン期BLACK SABBATHがそうであるように)
しかるに英国ハードロックから続く重みある伝統への風格と気品、その継承の権化たるJUDAS PRIEST、IRON MAIDENなどの持つ「ヘヴィメタルの正統性」にどれだけ美意識を向けているか。
そこが「様式美」において、実は最重要だったりするのではないだろうか。
なので「様式美」を単純にメロディック、クラシカル指向のメタルジャンルのことだとしてしまうとちとニュアンスが違ってしまう。
何故なら、そこにはあの頃の時代性を帯びた独特の志向性、つまりはヘヴィメタルとしての正統性問題が少なからず含まれていたからだ。
要するに、「様式美」即ち、伝統や正統性を背景にした”様式”、への美意識。
そうした意味での正統派ヘヴィメタル、英国伝承型ヘヴィメタルの意を孕ませて「様式美」とされていたのがあの時代だった。
そう、「様式美」とは、レディティマシー重視政策だ。
言ってみりゃあ「右翼」だ。
メタル右翼。保守派、マサイ党的スローガン。
尤もこうしたものも時代を経ていけば風化、形骸化されていき、やがてただクラシカルなもの、リッチーブラックモア~イングヴェイ系統の音楽ジャンルを指し示すようになって、つまりはベタ化が進んでしまうわけなのだが。
(ちなみに「ネオクラシカル」だのと称されていくのも、様式美が廃れていく80年代末期以降の話だ)
おっと、話を彼等に戻すとしよう。
さてこのバンド、系統から言えば、初期QUEENSRYCHEの後釜、というポジショニングだった。
つまりQUEENSRYCHEがやがてプログレッシヴさとメジャー性を高め、初期的なヨーロピアン正統派メタル、つまりは上で言うような「様式美」に収まらなくなっていくなか、期待されて出てきた「本格派アメリカン様式美ヘヴィメタル」が彼等だった。…と記憶する。
とはいえ、こういう美的構えをやろうとするとやれマスク被るだとかについ繋がいがちなのが如何にもエンタメ大陸アメリカ西海岸短絡ヤンキー脳なのだけれど、まあもういいか、変態仮面Voも死んじゃったし。(R.I.P.)
実際、アルバムのクオリティは非常に高く、緩急に富んでいる。
重厚なミドルテンポチューンで固めながら、時にファストチューンを配置。
バラエティもさることながら、途絶えることないダークな質感と緊張感の連続がまた見事だ。
それに先にも触れたことだが、やれドラゴンレディのヴァルハラがメイデイとかいううすらおめでたい格式と重みのあるDIOばり中世寓話的世界観を、ウェットで暗み帯びた欧州叙情で彩る独特のサウンドは、この手の正統派ヘヴィメタルが若手から出てこなくなってきた80年代後期には貴重な駒だった。
尤もそんなクリムゾン先生も、次のスペースバンパイヤで「少し見劣るけれど、これも悪くない」となりながら、やがて売れなくなって消えていくのだが。
諸行無常、つわものどもが夢の跡、静かな波が打ち寄せてる。
そんなぼくたちの80年代様式美よ永遠に。
- アーティスト名:CRIMSON GLORY
- 出身:アメリカ
- 作品名:「Crimson Glory」
- リリース:1986年
- 正統派HEAVY METAL
よって、そのほとんどが70~80年代の古いものばかり。
尤も音楽批評というかしこまったものよりは、大概がただの独り言程度のたわいない呟きなので、ゆるーく本気にせず(笑)読んでいただければ幸いです。