加齢と対峙する、ということ
BAD RELIGION /「Age of Unreason」(2019)
人は誰しも、歳を取る。
皆が判りきっていることなはずだが、しかしそれが、皆が判らない。
歳を取ることで得るものもあろうが、失うものばかりが眼に映る。だから、判りたくない、判ろうとしない、判れない、そして判らない。
ああ、耳の痛い話だ。
だってその皆の一人に、ぼくも含まれているからだ。
バドレリ、久方ぶりに待望の新作!
と聞いて待望している若者が、どの位いるのだろう。
「エピタフの社長がギターやってるバンドでさあ…」と説明を始めれば、ふーん、金持ちの道楽ハードコアですかあ?と、下手すりゃあ事情も知らない分際で鼻で笑われかねない。そんな、おっさんの勝手な被害者妄想が浮かんでくる。
そういや、音楽雑誌のレビューも酷いもんだった。
よそ様のお仕事にケチ付けたくはないが、まあ金払ってるからいいだろう。レーベル資料を元にネット記事程度の情報と、当たり障りのない薄っぺらな一言感想、以上。
いつもの事だが、好きでもなく知りもしないなら載せるなよロッキング・オン。
尤も、フォローする気もないけれど、幾ばくかの理解が全くそこに出来ない訳でもない。
だって、まともに向かえばさしてそう書くことねーんだわ、このパイセン達の新作。
さあ。そんな皆様ご待望のバッドレリジョンの新作でございます。
あのさあ。彼等に限った話じゃないが、この手のご長寿バンドが往年の作風を意識したことことやろうとすると、途端に劣化セルフカバーへと堕する謎、これって何すかね?
焼き直し、ならまだマシだ、直ってるから。
その大概が、悪いけど焼き直ってない。
ツヤがない、多分これだと思う。もう、ハリのある艶がだな、そこに通ってないのだ。
だから、同じことやってるのに、そんな昔とさして変わらないものなのに、それ程劣ることしてはいないのに、でも焼き直らない。
かくして、痛々しいウン年度版劣化セルフカバー集が世に爆誕する。
もうやめて!彼等のライフはとっくにゼロよ!…てシャレにならんわ。
そんな訳で、前作から続けての、この劣化セルフカバー集第2弾。
…とまで言ってしまうとそれはちとdisり過ぎ、そこまでじゃあないだろといったこちら。
意外や売れた前作同様の、矢継ぎ早ショートレンジ勝負モノ、とくれば当然指針は、往年のアレである。
80年代後期メルセデス(多分)をジャケ画にしてるあたり、どうにも示唆的だ。
一言で言うなら、悪くはない。が、にしてはちと辛い。
何が辛いのか。
作風上、これをやれば色褪せや老いがどうしたって覗くだろ、ってところがだ。
冒頭の話とは翻って、歳をとって失うものもあろうが、片や得るものだってある。
それは、「老い」ではなく、歳を重ねることでこそ得る、「成熟」だ。
例えば、かつては彼等がそれ程積極的にはやろうとはしなかった、アコナンバーや、ミドルでのレンジ広めなポップナンバー。これらに染みている味わいが、まさにそれ。
そこには、若造には出せない、経験値と熟成された深みが滲んでるではないか。
つまり、だ。
やもすれば今や速くない曲のほうが、寧ろ”らしい”とすら言えかねない、そんなハードコア高齢化問題。
そして一方で、 ファストチューンでビートと一緒に哀愁メロのハモリを迸らせ叩き散らして疾駆する、あの定番ヤロウ臭メロコアが、そろそろキツくなってきているという事実。
本作がまず始めに語るのは、そんな残酷な現実の通達だ。
そして。
そのぶんだけ、練熟を重ねてこその円熟した旨味が出せるようになった。
続けて本作は、その希望の伝達も、他方で忘れていない。
加齢と対峙すること。その難しさを、あちらにも、またこちらの耳にも、色々と痛く痛感させてくれる作品だ。
- アーティスト名:BAD RELIGION
- 出身:アメリカ
- 作品名:「Age of Unreason」
- リリース:2019年
- HARDCORE,MELODIC HARDCORE他