ベテランパンクオヤジの意地と維持~MILLENCOLIN / 「SOS」:84p

アルバムレビュー
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「そこそこ」を越えて突き抜けることの難しさ

MILLENCOLIN / 「SOS」(2019)

毎度毎度、良くも悪くも「そこそこ」を打ち続けているのが、このバンドだ。
古参の手練れらしい成熟した外さなさの安定感、と言えばその通りなのだが、その手堅さの分、悪く言えば今ひとつ突き抜けない。

そんな彼等だが、しかし今回のアルバムは、少なくともそんな「そこそこ」以上を見事に打ち抜いた。
これまでの彼等に対しての、もう一段ガツンと響くインパクトが欲しい、という厳しい声にも答えられそうな、そんな手応えを覚えられる頼もしき出色ぶりだ。

北欧はスウェーデンの誇る、熟練の老舗パンク屋、MILLENCOLIN
世界一の美メロ大国スウェーデンきっての重鎮メロパンクバンドとして、これまでも躍動感に溢れたハードポッピンなメロディックさに定評を堅持してきたのが、彼等である。

が、特にここしばらくか。
脂が落ちてきたこともあってか、反面そこに物足りなさを覚え始めたことも、なきにもあらず。
まあ、「だがそこがいい」系というか、本質的には派手さも奇も衒いなくロックンロールを重ねる類の愚直なバンドであるからに、それもまた“らしい”魅力でもあったわけだが、しかしである。
そんな彼等の今作は、我道を踏みながらも、かつここしばらくぶりにパンチの効きが強まっているのがポイントだ。

何せ、のっけからタイトルソングの、このご機嫌ぶりときたもんだ。
更にはこの曲のみならず、久々に彼等のメロディに、ぐっときた。
ああいいね、ではない。
ぐっと、懐の胸ぐらを掴んできたのである。

しかもその強いフックを用いての、近作何故か見せてきている謎のバドレリっぷりも、やっと模倣を超えた訴求を示してきているのも素晴らしい。
ご本家の新作での老けたユルさを見てしまったら、やもすりゃこちらに軍配が上がりかねないくらいだ。

古豪のベテランとして、長年の年季と技量を詰み重ねつつ、他方で作品性としての良質さをも毎度、新たにブラッシュアップさせていく。
不変と新味を見つめながら、飽きさせず、迷わず、弱らず、鍛え磨き、ただただロックし続ける。

言うほど決して容易いことではないそれを、彼等はここで見事に果たし、まだ現役としてしおれヘタれていないことを正面から腕尽くで明かしてみせた。
そんなオヤジパンクロックの、「意地」と「維持」がここには脈打っている。

彼等をそこらの生っ白い田舎古老パンクだとナメぬがいい。
そう若造連中やシーンに認識を改めさせる、こいつは力強い拳骨となるだろう。

DATE
  • アーティスト名:MILLENCOLIN
  • 出身:スウェーデン
  • 作品名:「SOS」
  • リリース:2019年
  • PUNK,POP PUNK他
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