レトロをつむぐ不世出のポップソング職人~DONNIE VIE / 「Beautiful Things」:85p

アルバムレビュー
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DONNIE VIE / 「Beautiful Things」(2019)

例えば、雲もなく澄んだ、朗らかな五月晴れ。
そう、まるで今日みたいな余りに爽快な休日に、ちょっといい服でも羽織って、少しばかり散歩にでも出てみようか。
そんなときのスマホに入れるのであれば、今なら断固この一枚を勧めよう。
そう言いたくなるのがドニー・ヴィーによる、こないだ出されたばかりのソロアルバムだ。

ENUFF Z’ NUFFのシンガーにして、コンポーザー。
個人的には、軽くしゃがれながら鼻に抜けるようなこの声がほんのり苦手だったりもするのだが、そんな私的嗜好を差っ引いたとしたって、彼の抜群に高いポップメロディセンスは否応無しに認めざるを得ない。
そしてそのことは、今回の新作においても強まりはすれど、揺らぐ由すらないはずだ。

通算4枚目。
いかにも彼らしいBEATLES的なほんのり甘いエヴァーグリーンカラーを備えた佳曲を羅列しての本作は、全体的にブライトな明朗快活ベクトルに大振りで向かっており、なんとも温かなぬくもりとノスタルジーを湛えた音空間を柔らかく広げてくれる。

にしてもまさに不世出の名ポップソングメイカーたる面目躍如、どの楽曲もおしなべて粒ぞろい。
ジョン・レノンのカヴァーが、まるでそこにあってごく然るべきかのようにそうっーと溶け込み並んでいるのも、その証左だ。
メロディが息衝く、とはこのようなさまを言うのであろう。

また役者なるかな、それを抜群のサポートで下支えしているポール・ギルバートロジャー・ジョセフ・マニング・Jr(元JELLYFISH)の客演も見事と評する他にない。

かたや、明度高めの作りのためか、彼のもう一面たるあの切ない悲哀を帯びた陰りのあるペールトーンは今回においては抑え気味なのだが、ここではまた、それもその味というもの。
大体、春の陽気の下では、やっぱりこういうのがいいじゃないか。

さあ、もうそろそろ頃合いだ。
これを書き終えたら、ぼくも少しばかりドアの外に出て、木漏れ日の下にでも向かってみるとしよう。
勿論、このアルバムと一緒に。

DATE
  • アーティスト名:DONNIE VIE
  • 出身:アメリカ
  • 作品名:「Beautiful Things」
  • リリース:2019年
  • POWER POP,POP ROCK,MELODIC HARD他
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